「浸感弁®」のモニター販売開始について
―津波を感知して自動で弁閉止、危険物の流出を安全に防ぐ-

2024年 6月 12日

東電設計株式会社

株式会社 協成

このたび、東電設計株式会社(代表取締役社長:窪 泰浩、以下「東電設計」)と株式会社協成(代表取締役社長:冨川 清、以下「協成」)は、津波を感知して自動で弁を閉止、内部の危険物が流出することを防止する「浸感弁(しんかんべん)®」を開発、本日よりそのモニター販売を開始いたします。

本日よりまずモニター販売を開始し、実際の使用環境においてお客さまに使用していただき、設置してみなければ想定しえないことなどを最終的に確認し、本年12月より本格販売する予定です。

写真1 浸感弁(カットモデル)

【開発の背景】

東電設計は東日本大震災以降、日本全国に点在する中小の危険物貯蔵タンク(約6万基、2022年度消防庁統計)の流出防止対策に積極的に取り組み、去る2022年6月15日、「小型危険物貯蔵タンクの津波・水害による流出防止対策方法の開発について―CFRPを用いた面的拘束による危険物タンクの津波・水害対策―」(http://www.tepsco.co.jp/topics/topics_20220615.html)を公表いたしました。

上記対策は津波襲来の際、タンクが倒壊しないようにするものですが、このたび開発した浸感弁はタンクに付属する配管のタンク元弁の直近下流に設置するもので、津波を感知して自動的に弁を閉止することにより、配管が損傷した際に内部の危険物が流出することを防止します(東日本大震災ではタンクの損傷以上に配管の損傷が見られました)。

図1 浸感弁設置イメージ

現在、500kL未満の小規模の屋外貯蔵タンクの元弁は「手動式でも良い」とされていますが、津波警報下での弁の閉止を手動で安全に実行することは非常に困難な場合があり、東電設計は津波の水圧を検知し、自動で弁を閉止する浸感弁の開発に取り組むこととしました。

浸感弁を設置すれば津波警報時に弁の閉止を気にすることなく素早い避難が可能となり、また、実際に津波が来た際や、高潮や洪水等の予期しない事態においても自動で弁を閉止することができるため、防災上、そして人身の安全上、非常に大きな役割を果たすことができると考えます。

【開発の概要】

そこで、東電設計はガス導管向けの弁の製作専門である協成の協力を得て、「津波の水圧を検知し弁を閉止する」浸感弁を開発しました。開発当初は「津波の水」を検知し作動することを狙いましたが、湿度や風雨よる誤作動の恐れがあり、より確実な動作を追求し「津波の水圧」に着目、当社試験では高い信頼性を得ることができました。

浸感弁は水圧で機能する自動膨張式ライフジャケットのセンサーから着想し、水圧によりバルブ内の水圧検知部(ダイヤフラム)が押され、それが引き金となって弁を閉めるという構造です。電気を使わず機械的に作動させることができるため、危険物タンクや配管で使用しても着火源となりません。

図2 浸感弁イメージ

また、津波は「黒い水」と呼ばれるほど、砂や泥,葉や木くず、ビニール片等が混ざっており、そうした汚れた水でも確実に動作しなければなりません。東電設計と協成は浸感弁のテストを重ね、給水口から異物が入らないよう工夫を凝らし、非常に汚れた水であっても水圧を確実に検知、弁が閉止することを確認いたしました。

浸感弁は協成が得意とするガス導管向けの圧力検知遮断弁を基本設計として活用しているため、その圧力検知精度が高く、また、万一の誤作動した際にも簡単にお客さまの手で復旧することができるようにシンプルな内部構造としました。

【本製品の特徴】

  • 津波の水圧を検知して自動で確実に閉まる
  • 電気を使わずに作動するため着火源とならない
  • 葉やビニール片、泥などが混じる汚水でも確実に動作する
  • シンプルな機械構造のため、故障が少ない
  • 万一の誤作動の際でもお客さまの操作により簡単に復旧ができる

【効果の検証】

東電設計と協成は2019年から検討を開始し、試作品を製作、泥や葉,木くずを混ぜた汚れた水で水没実験(写真2)を繰り返し、浸感弁の作動と遮断状況を確認、2024年3月、確実な作動と遮断性能を有する製品が完成しました。さらに動的な津波でも作動することを確認するため、津波実験を実施し、確実に作動することを確認いたしました(写真2)。

写真2 汚水による浸感弁の浸水実験

【販売について】

本日よりモニター版を発売し、実装において最終確認を実施、2024年12月より正式に発売予定です。

今後は、津波、高潮、洪水等の水害における、万一の際のリスク低減と安全性向上のため、地方自治体や漁業協同組合、農業協同組合、油槽所や各種プラントを所有される皆さまを対象に営業活動を実施し、漁港や海岸、河川近傍に設置された小規模屋外タンクに対して浸感弁の採用をお願いしていきたいと考えています。

以 上

<お問い合せ>
東電設計株式会社 広報室 長谷川  TEL:070-8830-0420
株式会社 協 成 営業部 松井 TEL:090-6204-8154