小規模の屋外貯蔵タンクの津波や水害に対する対策CFRPを用いた面的拘束手法

  • 防災
  • インフラ

これまで、500kL未満の小規模の屋外貯蔵タンクには津波や水害に対する対策が施されていませんでしたが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた面的拘束手法を活用すれば、耐津波・耐水害性能を低コストで大幅に向上させることが可能となり、防災上、非常に大きな役割を果たせると考えています。

Point

  • 低コスト
  • 溶接不要
  • 既設設備の耐震性に影響を与えない

背景

1997年の調査では500kL未満の小型の屋外貯蔵タンクは、各種プラントや漁港,農場などに6万基以上の設置登録があるとされており、2011年の東日本大震災では多数の屋外貯蔵タンクが津波による甚大な被害を受けました。このような500kL未満の小型の縦型屋外貯蔵タンクの多くはアンカーボルトにより固定され、風や地震に対して耐力は見込まれているものの、津波に対する耐力は設計想定外であり、津波に襲われた場合、固定されたアンカーボルト周辺での応力集中により破断し、内容物が流出することなどが懸念されます。

そこで、津波が懸念される沿岸部や水害が懸念される河川近傍に立地する小型の屋外貯蔵タンクに対して、流出等防止のために簡易で安価な対策工法が期待されることとなり、当社は「消防防災科学技術研究推進制度」を活用し、CFRPを用いた面的拘束手法を開発、津波対策に大きな効果があることを確認いたしました。この手法は後述の通り、CFRPをタンクの周りに腹巻のように巻き付けて補強するもので、非常に簡易で、既設のタンクにも低コストで追加設置が可能な点が非常に大きな特徴です。
その後、消防庁危険物保安室の「屋外貯蔵タンクの津波・水害による流出等防止に関する調査検討会」において本対策工法に関する調査及び検討が行われ、その有効性が確認されてガイドライン化されることとなりました。

流出防止対策方法の概要

対策工法1

既往のアンカーボルトでの固定は「点」でタンクを拘束しているため、応力集中の懸念があります。対策工法1は、CFRP を腹巻のように巻き付けることによって、「面」でタンクを拘束、応力集中の軽減を図るものです。また、CFRP を腹巻のように巻いて隙間なく施工するため、タンク底板下への浸水も防ぐことができ、「浮力を発生させない」ことも期待できます(浮遊して流れていかないこと)。
CFRP を構成する炭素繊維には方向性があるため、縦方向と横方向の繊維を組み合わせて貼り付け、強度を確保します(図1)。

図1

対策工法2

対策工法2はワイヤーと防油堤内に設置されたアンカーにてタンクを拘束する工法です。タンク側板へのワイヤー取付けを「点」によって接続すると、波力がかかった場合、その部分に応力が集中し破断する可能性が高まるため、ワイヤーを接続するための接続孔をプレートに溶接で取り付け、当該プレートをCFRPによって腹巻状に巻き付け、タンク側板に設置、応力の分散を図ります(図2)。

図2

効果の検証

まず、両工法に対して数値解析によって効果の検証を実施し、対策工法を施工したタンクはすべてのケースで無対策なものに対して限界津波水位が高くなること(より大きな津波に対して耐えること)を確認しました(図3)。
さらに、その数値解析の妥当性を確認するため、対策工法を施工した3.45kLの模型タンク(高さ2.24m,直径1.4m)に対して津波を模擬した波を当てる実験と、水害を想定しタンクを浸水させる実験を行い、両対策工法の有効性と数値解析の妥当性を確認することができました(図4)。

  • 図3 タンク容量と限界津波水位の関係(50%液位)
  • 図4.1 対策工法1 津波載荷実験
  • 図4.2 対策工法2 津波載荷実験

〈動画リンク(消防庁 検討会報告書より引用)〉

今後の活用

本開発を通じ、消防庁危険物保安室の「小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策工法に係わるガイドライン」の作成に協力させていただきました。

今後は、海岸(漁港)や河川近傍に設置された小規模屋外タンクに対して本工法を適用いただき、津波,高潮,洪水等、万一の際のリスク低減と安全性向上のため、地方自治体や漁業協同組合,農業協同組合の皆さまに採用をお願いしていきたいと考えております。

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