プロジェクトストーリー

鹿島沖大規模洋上風力発電
プロジェクト

大規模洋上風力発電所イメージ(写真提供:ウインド・パワーグループ)

再生可能エネルギーの中でもとりわけ将来性を秘めている洋上風力発電。
日本初となるビッグプロジェクトのコンサルタントとして、総力を挙げ「海」と「風」に挑戦する――

ウインド・パワーグループHP

プロジェクトメンバー紹介

土木本部社会基盤推進部 構造設計グループマネージャー N・K
陸上から海上の仕事に挑んだ古参土木技術者として手腕を発揮した、プロジェクトマネージャー
電気本部電力エンジニアリング部 S・M
これまで変電所の設計一筋に従事してきた電気担当者
建築本部建築設計部 建築計画グループマネージャー T・S
一般建物から電力施設まで幅広く設計を行うマネージャー
営業本部営業第一部 課長 N・K
電気本部での経験を活かし、技術力のある営業マンとしてプロジェクトを統括

START

日本の未来を支えるエネルギー、洋上風力発電

石油・石炭など資源を枯渇させる従来型エネルギーとは異なり、自然の力を活用して繰り返し利用できる太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギー。中でも、陸上よりも風況が安定している洋上の風の力を利用する「洋上風力発電」は、四方を海に囲まれるわが国においては、最も注目を浴びる手法の一つだ。陸上に比べて発電する電力量を多く見込め、また、騒音等で近隣住民の生活を脅かすことも少ない。元来天然資源に乏しく、エネルギー自給率が極めて低い日本の「未来を支えるエネルギー」と各所から期待が集まっている。
これまで我が国における洋上風力発電事業としては、波がおだやかな港湾の防波堤の内側や、海岸線付近に風車を設置することがほとんどであった。今回のプロジェクトは、さらに洋上に一歩足を踏み出して、沖合に大規模な風力発電所を建設するというもの。本格的な海上での工事となり、実証事業を除けば、国内で初の試みとなる大きな挑戦であった。
「再エネ施設で作られたエネルギーは、電力会社の送電網に系統連系され、各家庭に送り届けられます。これまで当社の再エネ関連業務といえば、地点の調査や発電設備の設計、系統連系に関わる電力会社との協議支援などが多く、電気や建築などの各部門が個別に対応することが主でした。しかし今回は各部門同士の連携が必須となる、会社全体を巻き込んだ業務となり、当初の想像を遙かに超えるものとなっていました」(電気/S・M)。

ウインド・パワーかみす洋上風力発電所(写真提供:ウインド・パワーグループ)

CHALLENGE

「陸」とは違う海上工事。手探りで進めた設計業務

「お話をいただいたきっかけはやはり系統連系設備(変電所)のご相談だったのですが、話を進めていくうちにどんどん業務範囲が広がっていって、結果的には今回のプロジェクトで当社が担当したのは、風力発電所全体の設計ならびにコンサルティングとなりました。電気・建築・土木の各部門が総力を挙げ、一体となって対応し、クライアントの信頼を獲得することができました」(営業/N・K)。
大型受注の喜びに浸るのもつかの間、実務は苦労の連続であった。最大の難関は、これまでに洋上風力発電事業に対する業務経験が少なく、全て手探りの中で進めていかなければならなかったことである。
「電力会社の設備であれば、たとえば、陸での送電ケーブル工事などでは、とにかく設備の信頼性を優先し、バックアップや予備など余裕のある設備構成で設計していました。しかし、同じことを海底ケーブルに適用したら膨大な工事費に。事業として成り立たなくなる懸念もあり、可能な限り建設コストを削減するための設備構成を考えなければなりません。事故率などによる信頼性と、コストとのバランスを取るのにとても苦労しました。」(電気/S・M)。
同様の苦労は海底調査の場面でも立ちはだかった。日本の海の中でも、海象条件の厳しいことで知られる鹿島灘。初めての本格的な海上調査は、国内最大級の自己昇降式作業台船(以下SEP)を用いて進められ、比較的海が穏やかな夏季の限定された期間内で調査を完了しなければならなかった。SEPのチャーターにも期限が決められ、これを逃すと次はいつ手配できるか確約もできないという厳しい条件下。調査が始まってからは天候は神頼みで、台風が来ないことを祈る毎日だった。
調査は進み、いよいよ風車を建てる区域での海底地質ボーリングを実施したところ、当初予測していたデータに反する結果が出現。現場から、計画どおり調査を終了するか、さらに追加調査をするのかと判断を迫られ、一時作業を中止せざるを得なかった。とにかく早急な決断が必要だったため、関係者と緊急協議し、当初想定した地盤強度が確認できるまでボーリング調査を継続することに。想定外の追加調査であり、当然費用が嵩むことになるが、SEPのチャーター期間内であれば数百万円程度の追加で済む。いったん調査台船を引き上げてしまうと次の手配時期は検討もつかない。仮に手配できたとしても、また数億円の費用がかかることになる。
「最終的にはその場で追加調査を行ったことにより、当該区域での地層把握に大きな成果を得ることができました。イレギュラーの追加となったため所定の期間内に調査を完了できず、他の調査データが得られない可能性もありましたが、結果的には好天という運にも恵まれ、いい方向に進みました。事業全体に大きな影響を及ぼしかねない決断であったため、とても勇気が要りました。これまで経験してきたのとはスケールが違う仕事でしたね」(土木/N・K)。

自己昇降式作業台船(写真提供:ウインド・パワーグループ)

SUCCESS

クライアントの情熱に引っ張られ、一丸となって困難を乗り切る

設計業務もさることながら、とくに困難を極めたのが、コンサルタントとして携わった「水域占有許可」取得などの事業化に向けた支援であった。茨城県が占有権を持つ水域に風力発電所を建設するため、国や県、大学などから関係諸氏が集まって協議会を何度も開催し、会議のための資料作りや議題の検討・質疑への回答準備等々、激務が続いた。
「水域占有許可を取得できるかどうかは、プロジェクトの成否に直結します。プロジェクトマネージャーとして、無我夢中で対応した数ヶ月間でした。営業担当などは、協議会関係者にクライアント社の社員だと思われていたほど(笑)。それだけクライアント側に信頼され、深く入り込んでいたということでしょう」(土木/N・K)。
本プロジェクトのクライアントであるウィンド・パワー・グループ(以下WPG)は風力発電事業のエキスパートで、すでに茨城県神栖市沿岸の大型風車の設置・稼動に成功している。だが鹿島港沖の計画は、沿岸から約2km沖合に位置する本格的な洋上のウインドファームで、これまでのものより圧倒的に風車の基数も多く、風車の大きさも最大級。日本国内では誰も手がけたことのない前人未到のビッグプロジェクトとなる。
「ただでさえ規模の大きな風力発電所を、沖合に設置するという挑戦。WPEの社長はとにかく風力発電に熱い思いがある方で、有言実行でパワフルな人物です。この人のためならやってやりたい、と思わせる魅力があり、社長の情熱に引っ張られプロジェクトチームのメンバーも全精力を注いで取り組んできました」(営業/N・K)。

大規模洋上風力発電計画(写真提供:ウインド・パワーグループ)

NEXT

専門を超え、パイオニアコンサルタントとして新しい挑戦へ

現在、プロジェクトはNEDOの開発支援事業としての実施設計が完了した段階にある。今後は施工に向けたさらなる検討、メーカーの風車製作・施工を経て、早期の発電開始を目指している。
「プロジェクトの初期段階から、クライアントの声に昼夜を問わず耳を傾け、事業化に向けた様々な検討に取り組み、社内の取りまとめを行ってきました。また、発電所の設計については、特にクライアントの意向を取り入れ、周囲の環境に配慮してデザインを工夫するなど、大きな問題もなく納めることができました。当社のノウハウを活かして業務を進めました」(建築/T・S)。
「当社は電力設備に特化した設計会社ですので、専門分野については経験豊富で自信もあります。しかし、本プロジェクトにおいては本来業務の範疇を超えたコンサルティングが主となりました。特に再エネ分野におけるコンサル業務は近年需要が増えており、今回の成功事例は今後のビジネスチャンスの拡大に大きく貢献したと自負しています。クライアントからコンサルタントとして求められることは、計画から設計、建設、運用にわたるまで多岐にわたります。『それは良くわからない』『これは当社の仕事ではない』といった選り好みは許されません。今後全国で展開されていくであろう洋上風力発電のコンサルタント先駆者として、この経験を活かし力を発揮していきたいです」(営業/N・K)。
海外では一般的となった洋上風力発電だが、わが国では島国特有の海況と風況のため、独自の建設スキルが必要とされてきた。本プロジェクトが運用を開始したあかつきには、「日本型大規模洋上風力発電所」として世界からも注目を浴びるであろう。鹿島港沖から吹いた風が日本の各地に行き渡り、新しいエネルギーをもたらしてくれる将来もそう遠くはない。

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